まとめ
- リアルなビジョンを思い描き、その世界観をロゴデザインで表現
- 敢えて宣伝しない、広告に頼らないブランディング戦略
- 人と人との縁を結び、信頼できるお客様が信頼できるお客様を呼ぶ
港区南青山の閑静な住宅街に店舗を構える中華料理「乃木坂 結」のマダム、柳本真理子さんからお話を伺いました。
お店がオープンしたのは2021年2月。コロナ禍真っ只中で緊急事態宣言が発出され、時短営業や酒類提供の自粛が要請される等、飲食業界にとっては厳しい状況下での開店でした。それにも関わらず、全く影響を感じることなくここまで順調に営業を続けているとのことです。
Ibuki Designが手掛けたのは、お店の看板となるロゴデザイン。多くの場合、ロゴ制作を依頼されるお客様は、「色は○○が希望。入れたいモチーフは○○の形で、書体は○○。シンプルで洗練されたイメージで・・・」というようにまずは見た目の要望をリストアップされることが多いのですが、柳本さんの場合は違いました。
提供して頂いたのは、きっちりと客観的な目線でまとめられた事業計画書、それに目指すビジョンや事業にかける溢れる想い、思い描くストーリーを何枚にも渡って綴った依頼書でした。単なる「こんなロゴを作ってほしい」という要望ではなく、そのもっと先を見据えた「お客様と私たちとの間に、こんなシーンが生まれるようなお店にしたい」というまるでその情景が目に浮かんでくるようなリアルな物語に、私も思わず引き込まれ、共感しつつ読み入りました。また、物件の間取りや設計パース、お店に到着するまでの道のりを撮影した動画や使用する器の写真等、数々の参考資料を送って頂き、遠く離れた岐阜県に住む私でも現地の様子が手に取るように把握することができました。

中華料理店といっても駅近の路面にありがちな、お腹をいっぱい満たすようなギラギラしたお店ではなく、立地も乃木坂というちょっと特別な商圏。慌ただしく時が流れる都会の真ん中で、ひっそりとした佇まいでお客様をお迎えし、油を極力使わないお料理と気の利いた細やかなサービスで、心にも体にも優しくて心地よい満足感がゆったり、じんわりと続くような幸せを提供する空間。決して店側が押し付けるわけでもなく、かといってお客様に押し付けられるわけでもなく、自然体でさりげない一流のおもてなしが味わえるレストラン ー それが乃木坂 結が理想とする姿でした。
そうして生まれたロゴは、「素敵な出会いが生まれ、幸せな縁を結ぶ」という想いを込めて、水引きの花結びをモチーフに取り入れた、上品で落ち着いたデザイン。ミシュラン一つ星を獲得したシェフが生み出す、中華料理と和食の枠にとらわれない自由な発想の創作料理を象徴するかのような、一見中華とは結びつかない看板のビジュアルに、道行く人も思わず何だろうと興味を持って入って来られるそうです。立地的にも、人通りの少ない道路から少し奥まったところに位置するビルに店舗を構えており、まさに知る人ぞ知る隠れ家的存在のお店になったのです。

まさに都会の隠れ家と呼ぶに相応しいロケーション。
実はIbuki Designではお客様が事業を始められる際、ロゴとホームページをセットで制作させて頂くことが多いのですが、今回のケースに限ってはホームページの提案は行いませんでした。というのも、これだけ一流のサービス提供をするお店であれば、ターゲット層も一流のお客様。エリア的にも会社の役員や経営者、財政界など日本の経済を動かす人間がプライベートで出没する街。そんな方達がお忍びで訪れるような、自分と周りの特別な存在の人だけの行きつけにしたいと思えるお店は、敢えて積極的に宣伝をしない方がブランディング戦略としても有効なのではと判断したからです。

実際、この乃木坂 結のシェフが提供する料理は誰でも作り出せるような味でもなく、また接客においても他では体験できないような丁寧な寄り添い方でお客様を魅了し、「何度でも通いたい」「ずっと長くお付き合いしたい」と絶大な信頼と支持を獲得しています。また、そうしてファンになったお客様が「ここは本当に美味しくて、サービスも素晴らしい」と認めて信頼できる人だけに口コミで紹介することで評判が広がり、お店の価値観に共感できるお客様だけがネズミ算式に自然に集まってくる、というとても理想的なサイクルが生まれています。恐らく普通のホームページを作ってバッチリSEO対策も施して、リスティングやバナー広告で宣伝して・・・という従来のプロモーションを行っていたら、このような現象は起こりにくかったでしょう。まさに店名の「結」やロゴデザインの花結びに込められた想い通り、「人と人との繋がりを結ぶ」という現象が起こっているのです。
最後に、柳本様はこう仰ってくださいました。
「毎朝外を掃除する時にロゴの入った看板を見て『おはよう』と気持ちを新たにし、今日も有難うという感謝の思いと共に工藤さんのことを思い出します」
これぞデザイナー冥利に尽きる、とても有難いお言葉です。ロゴデザインは、事業の軸となり都度初心に立ち帰らせてくれる、事業者様にとっても大事な大事なビジュアルアイデンティティなのです。その役割を改めて認識させられました。
きっとこれからも、お客様の人生の1ページにそっと残るような、温かなレストランとして乃木坂 結は長く愛され続けることでしょう。

ここで様々な出会いとストーリーが生まれる。
柳本様、ご感想頂き誠に有難うございました。
■乃木坂 結

