日経デザイン7月号の特集記事に掲載されている、アサヒ生ビール(通称 マルエフ)のリブランディング成功例。
約30年前に終売した商品を令和の時代に見事に復活させ、その人気ぶりは一時休売が発表されるなど記憶に新しいところです。
元々のきっかけは2020年10月から始まった酒税法改正で、今後ビールの市場が拡大する事を見越して、スーパードライに引けを取らないような主力ブランドをもう1つ作りたいと言うことからプロジェクトが始まったそうです。
「今、世の中ではどんなビールが求められているか」という消費者心理(=顧客インサイト)を調査していくと、コロナによる閉塞感で、日本人は人との繋がりに飢えていて、ビールにも「人情味」や「人間味」を求めているということが分かり、最終的に「ぬくもり」というトレンドキーワードが浮上しました。
そこで浮かび上がったのが、一部の飲食店で樽生のみ取り扱われていた「マルエフ」だったということです。
この「ぬくもり」というのがブランドが提供する価値のうち、ターゲットの感情に直接訴えかける「情緒的価値」と言われるもので、近年とても重要視されている要素です。
「コモディディ化」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
2000年台に入りモノや情報が溢れ、商品の機能や品質などの特徴が薄れてしまい、消費者に違いが伝わりにくくなるという現象が起きています。そうして市場価値が低下してしまうことをコモディティ化といいます。市場にコモディティ化が進むと、差別化が難しくなり低価格化が進むという残念な結果が起きてしまいます。

2010年頃の携帯ショップには、どれも同じような機種がずらりと並ぶ光景が見られた。
これは目に見える商品に限った話ではありません。
例えば、美容サロンのようなサービスにおいても共通して言えることなのです。
ネイルやまつ毛エクステサロンなどは、自宅の一室で気軽に始められることからどんどん事業者が増えて、現在はもはや飽和状態と言われています。結果、価格競争に陥り経営が苦しく、サービス提供者の地位が下がるという事態が起きています。
「ジェルネイル」といった今ではごく有り触れたポピュラーなサービスを受けるだけなら、顧客がホットペッパーなどで情報検索し、より料金の安いサロンに流れていくのは容易に想像がつくことです。
ところがIbuki Designのクライアントの中には、「情緒的価値」を上手くアピールすることで、差別化に成功しているネイルサロンがあります。
nail S を経営する日比野幸さんは、爪噛みなどのトラブルのお悩みを解決する、自爪の育成に特化した「ときめき爪育」というサービスを展開しています。

この「ときめき」というキーワードが正に情緒的価値なのです。
「ボロボロで誰にも見せたくなかった爪先がどんどん見せたくなる。どんどん自分に自信が持てる。爪先から気持ちがときめいて、眺めたくなる爪先になれる」
これぞ、顧客の心をダイレクトに動かす、魅力的な訴求メッセージといえます。
技術ももちろん大事な要素なのですが、いくら
「当サロンは〇〇産のオイルを使用して、〇〇で身に付けた最新の手法でうんぬんかんぬん・・・」
と述べたところで、顧客の心には響きません。
「あぁ、またどこかで聞いたことがあるような謳い文句だな」
とスルーされるのがオチです。
顧客はそんな情報は、もう耳にタコができるほど色んなところで聞かされているので、うんざりしているのです。
それよりも、このサービスを利用することで
「どんな感動体験ができるか」
「どんな自分になれるか」
そこにこそ、魅力や価値を感じているのです。

市場に出回っている商品やサービスを見渡すと、この視点が欠けているばかりに「この機能が優れている」「こんな有効成分が配合されている」など、機能的価値を前面に出したキャッチコピーが多い傾向にあるように思います。
しかし、機能的価値が高いことはもう大前提という時代に私たちは生きているのです。
これからは、ターゲット層がどんなライフスタイルか、どんな時に喜びを感じるのか想像力を膨らませ、もっと深掘りして訴求していくことが必須になってくるでしょう。
これからは「機能的価値」「情緒価値」両面揃えることが大切ですね!

