病院・診療所・歯科医院・福祉施設など多くの医療機関で活用される「医療パンフレット」。病院やクリニックが認知拡大や新規人材獲得を実現するためには、この医療パンフレットの活用が大きなポイントとなります。
しかし、目的がはっきりしないままを制作してしまうと、医院概要や沿革といった基本情報を詰め込んだだけの冊子になりかねません。医療パンフレットとは、その組織を表現するものです。「どんなことを伝えたいか」「どんなシーンで使うのか」「どのような相手に読んでもらいたいのか」といったポイントを明確にした上で、着手することがとても重要です。
医療パンフレットを集患や人材確保、ブランド力向上等のために活用するにはどうすれば良いか、目的の整理の仕方や制作の進め方についてまとめました。
Contents
パンフレットの種類と目的
パンフレットを渡すターゲットや用途によって、種類はおおよそ次の3つに分けることができます。まずは、その種類別に注意したいポイントについて見ていきましょう。
Case 1. 総合案内:患者/利用者・医療機関(理念・価値観を訴える)

病院の沿革から運営理念など、根本から総合的に紹介するためのパンフレットです。
患者や利用者向きでもありますが、他の医療機関や企業など、BtoB間の繋がりを構築するツールという側面も大きいのがこのパンフレットの特徴です。セミナーや展示会などのイベントにおいて組織の活動をPRし、ビジョンに共感できる新しいパートナーやスポンサーと連携するための広報ツールとして利用されることも多いです。
このように、まだ組織についてよく知らない対象者に向けて理念や価値観を訴え、信頼感や存在感を高めるいわば「ブランドブック」と言えるのが総合案内パンフレットでしょう。
Case 2. 診療案内:患者とその家族(提供価値・サービスを訴える)

病院がどういった治療方針のもと、どのような医師がどんな医療機器を使い、どのような診療サービスを行っているのかを紹介するもので、医療パンフレットの中でもっとも親しみのある種類です。
病院の所在地や診療時間・診療科目など基本的な情報から、治療の流れや治療費・症例などの詳細情報まで掲載することができます。診療サービスの提供価値を具体的に表現し理解を深めてもらうための、主に患者さんとその家族に向けた集患やファン化といった役割が大きいのが診療案内パンフレットです。
Case 3. 採用案内:学生や求職者(共感を訴える)

医師や看護師・保健師・薬剤師等のスタッフのリクルートに特化したパンフレットです。
少子化が進み人手不足が加速する近年、人材確保の競争はますます激化しており、採用ツールとしての医療パンフレットの役割に注目が集まっています。基本的な募集要項はもちろん、教育プログラム・キャリアパス・サポート体制や働く環境について等、できる限り詳しく情報提供することが望まれます。
また近年では、多くの求職者が就職活動の際に「その組織の理念や価値観に共感できるか」という点を重視しており、入職後のミスマッチを防ぐためにも「この病院で働くことの魅力」について具体的にイメージができるような手法(先輩職員のインタビューなど)で表現することが求められています。
理念とストーリー

パンフレットの種類に関わらず共通して最も重要なのは、「まず理念から語る」ことです。人の心を動かす効果的な手段として有名なものに、「ゴールデンサークル」という理論があります。
人間の行動を促すために重要なのは、WHAT(何を)ではなく、WHY(なぜ)であり、企業やあらゆる組織は共感を呼ぶ「WHY?」の力で、「他とは違う価値がある」と感じて選び続けてもらうことができるというのがこの理論の主張です。WHYとは、組織のミッション・ビジョン・バリューにあたる「なぜそうするのか」ということであり、一番の根本である理念から伝えていくことが重要なのです。
また理念に共感してもらうには、その思想に至った経緯や理念を通じて本当に伝えたい大事なことを明文化することも必要です。ビジョンを実現して描きたい未来像や、そのために遂行するべきミッション、大切にしている価値観等をメッセージ性の高いストーリーで伝えることで、組織外にも共通した認識を持ってもらうことができるでしょう。
ゴールデンサークル理論についてはこちらの記事でも詳しく解説しております。
■人の心を動かすマーケティングとは?「ゴールデンサークル」理論に学ぶ
https://ibuki-design.com/1610/
制作の流れ
目的を果たすための医療パンフレットを作るためには、制作の流れを把握しておくことが必要です。事前に作業の流れをきちんと理解しないまま、行き当たりばったりで作るのは時間や費用の無駄につながるばかりか、全体として一貫性がなく説得力の低い制作物を生み出すことになりかねません。
ここでは、医療パンフレット作るための大まかな制作手順について解説します。
Step 1. コンセプト設計

まずは、コンセプトの設計を組み立てるところからスタートします。コンセプトは、いわばパンフレットを通して何を宣言したいのかを表した「ステートメント」とも言えます。理念から強み・独自性等の「その組織らしさ」を洗い出していき、「誰に何を訴えたいか」をぼんやりとしたアイデアから具体的な言葉に落とし込み、明文化したコンセプトを掲げます。例えば「矯正歯科治療に関心を持つ患者さんとその家族に、診療時には伝えきれない自院の治療にかける想いを表現する本」といった具合です。
このコンセプトは、この後に続く全ての制作ステップにおいて都度立ち返り「コンセプトと一貫しているか」を確認する軸となるため、時間をかけて慎重に設計することが重要です。また、目的に沿ったコンセプトを作るにはマーケティングやブランディング等の専門知識が求められるため、可能な限り制作会社のディレクター等、外部のプロの視点を取り入れながら行うことが望ましいです。
Step 2. 構成・ページ割作成
ここでは、誌面に載せる情報を整理し、各要素のポイントや掲載の順番を決めていきます。
例として、一般的な医療パンフレットに盛り込まれている項目は以下の通りです。
パンフレットに掲載する項目リスト ・表紙(ロゴ・キャッチコピー・ビジュアル) ・理念(ミッション・ビジョン・バリュー) ・代表メッセージ ・スタッフ紹介 ・事業内容 ・実績 ・組織概要と沿革 ・採用情報 ・アクセスマップ
全ての項目を漏れなく掲載する必要はありません。コンセプトと照らし合わせて本当に伝えるべきことは何か、吟味しながら絞っていきます。つい「あれもこれも」と多くの情報を掲載したくなってしまいますが、一番大事なメッセージが霞んでしまわないよう、優先度の低いものは切り捨てる覚悟も必要です。細かい情報は、ホームページに誘導できるようQRコードなど記載することでクリアできます。

項目をリストアップしたら、全体の流れや優先順位等のバランスに配慮しながら、前述したWHY→HOW→WHATの流れを意識し、読み手を惹きつける構成を組み立てていきます。最終的に、どのページにどの項目を載せるか一目で分かるようまとめた、ページ割(または台割り表)と呼ばれる設計図を作成します。情報量が少ない場合は冊子ではなく、折りパンフレットで作ることもあります。
Step 3. コンテンツ企画

次に、ページ割に基づきどんな素材(テキスト・写真・イラスト・図表など)が必要かを検討します。
それぞれの項目を読み手にとって分かりやすく伝えるにはどんな表現方法が効果的か、想像力を働かせながら企画していきます。例えば、治療に対して関心はあるけど不安もある患者さんに対しては、どんなドクターがどんな方針で医療に向き合っているか、具体的なエピソードなどを交えて紹介するのも有効でしょう。ターゲットが求職者であれば、実際に働く人達の生の声を伝えるべく、現場での1日に密着した記事や座談会の様子を紹介するのもおすすめです。
Step 4. 撮影・取材・ライティング

写真撮影や取材が必要な場合は、自分達で行うか外部に委託するかを検討します。
外部カメラマンに撮影を依頼する場合は、ロケ撮影の指示書や、内容によってはスタジオやスタイリスト等の手配が必要になることもあります。
外部コピーライターに原稿を依頼する場合は、スタッフへの取材をした上でライティングしてもらうのか、自身でまとめた資料や原稿からブラッシュアップしてもらうのかを決めます。
Step 5. デザイン・校正

ここまで来て、ようやく実際のデザイン作成に入ります。
ロゴや写真・イラスト・図などを収集し、原稿と一緒に制作会社やデザイナーに渡します。
デザイナーはレイアウトに従って初校(1回目の校正用原稿)を組んでいきます。必要に応じて、ビジュアルの制作を行ったり有料素材を活用することもあります。そして、色彩・フォント・図表や写真等、全てのデザイン要素が情報を効果的に引き立てるよう、メリハリやリズムをつけて細部までこだわってレイアウトします。
依頼主は、仕上がった初校に対して誤字脱字の有無はもちろん、最初に設計したコンセプトの内容に沿っているかを細かくチェックしましょう。必要に応じて再校を出してもらい、完成度を高めていきます。
Step 6. 印刷・製本・納品

校正が完了したら、最後に印刷工程へ進みます。
この工程でも、やはり高い専門知識が求められます。どのような用紙でどんな厚みが望ましいか、質感を上げるためにどんな表面加工を施したら良いか、目的に応じて適切な選択をすることで印象が大きく変わります。例えば、自費診療を中心とした富裕層向けの医療サービスを展開しているのであれば、上質な高級用紙を採用し、箔押し等の立体感のある加工で存在感をプラスするのは有効といえるでしょう。反対に一般的な患者さんを対象とするのであれば、そこまでこだわるのは自己満足の領域で、実態とのギャップが生まれるというリスクもあるでしょう。
印刷工程は条件が違えばできない加工等もあり、納期によっても価格が大きく変わる部分なので、なるべく制作の早い段階で仕様を決めて見積もりを取っておくことが大切です。
最後に
できあがったパンフレットを実際にどんなシーンで活用していくか、配布の仕方もイメージしておきましょう。
せっかく手間と費用をかけて作り上げたものを、院内に設置しておくだけではもったいないです。内覧会や展示会やセミナーなど、営業シーンにおいても積極的に広報媒体として活用しましょう。ただ口頭だけで説明するのとは違い、写真や図表を提示しながらのコミュニケーションでは、プレゼン力に圧倒的な差が出ます。
また銀行からの融資や補助金などの審査を受ける際にも、判断材料として医療パンフレットの提示を求められることがあります。こんな時、プリンターで出力してホチキスで止めただけの自前の資料と、しっかりとデザイン・製本されたパンフレットとでは与える印象が大きく違います。

パンフレット制作を通して、制作過程そのものがブランディングになるということを体感できることと思います。細かいステップも多くその過程は労力も必要としますが、しっかりとプロセスを踏んで作られたパンフレットは、最初から最後まで一貫性があり美しいものです。また、表現次第で「私たちがどんな存在でありたいか」を明確に訴えることができる大きな武器にもなります。
是非パンフレットを制作する際は、自分の組織の在り方を客観的に見直す良い機会と捉えて、以上の点を意識しながら進めてみてください。きっと素晴らしい繋がりを生み出す、心強いツールとなってくれるはずです。
※パンフレットのような広告媒体は、医療法や医療広告ガイドラインにより、掲載可能な情報と禁止事項が明確に決められています。掲載禁止の内容を載せた場合は違法となるため注意が必要です。詳しくは、厚生労働省のホームページにて確認することができます。

